2011年11月14日月曜日

スカイ・クロラ

森博嗣 『スカイ・クロラ』
という小説を読みました。



これは押井守監督によってアニメ映画化されたものの原作。
私は先にアニメ版を観ていました。
私が唯一リアルタイムで劇場で観た押井作品かもしれません。




映画版を観たのは少し前なのですが
読んでいるうちに共通点、相違点が割とハッキリと観えてきて楽しめました。


共通点で印象的だったのが以下。

三ツ矢碧が函南優一に言うセリフ。

「戦うことは、どんな時代でも、完全に消えてはいない。
それは、人間にとって、その現実味がいつでも重要だったからなの。
同じ時代に、今もどこかで誰かが戦っている、という現実感が、人間社会のシステムには不可欠な要素だった。
それは、絶対に嘘では作れないものなんだ。
本当に死んでいく人がいて、それが報道されて、その悲惨さを見せつけないと、平和を維持していけない。
いえ、平和の意味さえ認識できなくなる。
戦争がどんなものだか知らないのに、戦争は絶対にいけないものだって、そう思い込ませるには、歴史にの教科書に載っている昔話だけでは不十分。
だからこそ、私たちの会社みたいな民間企業が、汚れ仕事を請け負っているわけだよね」


これは映画版でも印象に残っていたシーンで
押井守オリジナルのいわゆる「押井節」のセリフだと思っていました。
しかし原作にそのままありました。
なんとなく『機動警察パトレイバー 2 the Movie』での押井節と共通している部分(平和とは何かを問うなど)があるような気がしたんですが
どうやら勘違いのようでした。
私もまだまだ修行が足りませんね。



相違点で気になったのはラストシーン。

ネタバレになってしまうので書きませんが
原作と押井作品では全く違う結末になっています。
きっとこれは押井氏に何かしらの明確な意図があって変えたものだと思います。
そこを勝手に推測してニヤニヤして楽しんでいます。
この辺の解釈を人と話し合ってみたいです。


映画版を観たとき良い意味で

なんだか何もない映画だなあ

と感じていたのですが
原作を読んでむしろ原作の持つ空気をよく映像化できたなあと驚きました。
この作品は終始独特の寂しさというか孤独感が漂っているように感じましたが
映画版でもその独特の静けさのようなものがありました。
だたひょっとすると映画版の印象が強すぎてそう思い込んで読んだだけかもしれませんが。

『スカイ・クロラ』はスカイ・クロラシリーズとしてあと5冊ほどあるようなので
これからゆっくりと読んでいきたいと思います。