2011年6月7日火曜日

虐殺器官


『虐殺器官』という小説を読みました。

これは普段まったく小説を読まないという友人がえらく
「気に入った!!!」
と言っていたので読んでみました。
本屋に行って探してみたらポップがあったり
カバーには伊坂幸太郎などの著名な作家の推薦文があったり
けっこう話題になった作品だったのですね。
文芸業界はとんでもなく疎いので
まったく無知でした。
お恥ずかしい。

感想。
なるほど、という感じ。
率直に言って
カバーに書かれているほどの衝撃は私は受けませんでした。
Amanonなどでも評価は高いので
たぶんこれは私の感性がちょっとアレなのだと思います。

うまく説明できませんがこれは私が思う
いわゆる「小説」ではないのではないか
と感じました。
もっと現実に近い
というか
お話を読んでるのにお話よりも現実社会の諸問題が頭に次々に浮かんできて
ストーリーよりも現実の方に目がいってしまいます。
ジャンルとしてはSFなのでしょうが
ファンタジーのはずが現代の世の中の構造を鋭く指摘する文に思えてきました。
(いやそもそもSFってけっこうそういうものなんですけど…うまく言えない。)

ただ個人的にはこれは東日本大震災の以前に読んでおきたかった。
と思いました。
「当たり前の日常」の中でこの作品と手にとり
「当たり前の日常」の裏にある世界に思いを馳せることができれば
もっと感じるものがあった気がします。
日常が壊れる経験
(といっても私は東京でぬくぬくと暮らしているわけですが)

日常がいつ壊れてもおかしくないということさえ想像もしていない日常

を破壊された経験の直後だとなんというか
衝撃が軽減されてしまったように感じました。

「小説」として特別好きな作品ではないですが
「作品」としては気に入りました。
読み応えがありました。

解説を読むと著者の伊藤計劃さんはもうすでにお亡くなりになっているようですね。
病魔と闘いながら書いた『ハーモニー』も読んでみたいと思いました。

2011年6月5日日曜日

放浪息子

風邪で寝込み
『恋文の技術』を読んでいたとき
『放浪息子』
という漫画も読んでいました。



これは今年の1~3月にかけてフジテレビのノイタミナ枠でアニメとして放送されていたものの原作の漫画です。
アニメは
水彩画のような淡いタッチ
絶妙な間のとり方
詩的な美しい映像表現
思春期の男女の繊細な心の機微を描いた素晴らしい作品でした。

アニメを見てとても感動したため
原作も読んでみました。

アニメと漫画では設定が若干違ったりもしましたが
漫画も素晴らしい作品でした。

この作品は
女の子になりたい男の子と
男の子になりたい女の子と
その友達たちの日常を描いた作品なのですが
特徴的だなあと思うことがいくつかあって

・「性同一性障害」、「トランスジェンダー」といった用語を使っていないところ。

作品として強いメッセージを持った「社会派」な作品にはしていません。
あくまで日常として描いていました。


・トランスジェンダーが受け入れられている設定

恐らくトランスジェンダーを扱ったフィクションは
トランスジェンダーを持った主人公が世間から受け入れられないところからスタートし
問題提起をしていきながら徐々に周囲に受け入れられていく
というのが定番だと思うのですが
この作品では
主人公である「女の子になりたい男の子」 
二鳥修一は
「男の子になりたい女の子」である
高槻よしの
と出会い、また
お話が性を意識しない小学生からスタートするためか
すんなりと受け入れてくれる友人ができます。
そこからお話がスタートします。
これって珍しいのでは?

あと細かいところですが漫画では
「好き」という言葉を必ず
「すき」
とひらがなで表記しています。
これもおそらく意識的なことかと。


この作品を観て、読んでいろいろと気付かされることがありました。
たとえば
なんで女の子は男の子の服を着ても(そんなに)おかしくないのに
男の子は女の子の服を着たらおかしいのでしょうね?
意識としては分かってもこれってなかなか説明できません。
性というのはやはりおもしろいテーマです。

この作品の連載はまだ続いていて
今主人公達は高校生になってるようです。
(ちなみにアニメは中学入学から中2の文化祭のみを描いていました。
これが素晴らしい。)
主人公達はどうなっているのでしょう?
どうなっていくのでしょう?
今後も続きを追っていきたいと思います。

2011年6月4日土曜日

MEMORIES

大友克洋監修の
『MEMORIES』
というアニメ作品を観ました。

いちおう短編集という扱いになるのでしょうか?
3つの作品から構成されていました。

ちなみにこれ今チラチラと調べながら書いているのですが
これ95年に劇場公開された作品だったのか!
だとするとすごいですね。

ちなみに95年というのは
阪神大震災があり
地下鉄サリン事件があり
エヴァンゲリオンが放送開始された年でもあります。
なかなかすごい年なのでは?



ひとつ目の作品が

『彼女の想いで』

原作 大友克洋
脚本・設定が今敏
となっています。

以前もどこかで書いたかもしれませんが
私は今敏監督の作品が好きです
なので
TSUTAYAでこの作品を目にし
パッケージの裏に彼の名前を発見しレンタルしたのでした。

ネタバレになるので内容は書きませんが
これまた今敏氏らしく
「夢と現実」
がモチーフになっている作品でした。
(ただ原作が大友氏の漫画らしいので考えすぎかも。原作読んでみたい。)
「思い出は逃げこむ場所じゃない」
というセリフが印象に残りました。
お話としては特にひねりのない話なんですが
けっこう好きでした。
キャラクターデザイン、作画も好きです。


ふたつめが

『最臭兵器』

これはコメディ作品でした。
これはこれで馬鹿らしく(いい意味
けっこう笑えて楽しめました。
あっさりした短編らしいオチでした。
でもアクションというか戦闘シーンはかっこいい。



さいごは

『大砲の街』

これは上2作品とは違ったタッチの独特のアニメーションでした。
カットのつなぎ方も不思議な感じがしましたし
カメラの動き(アニメにカメラはないんですが)も独特なものに感じました。
デジタル技術も多様してると思います。
台詞も少なくお話はちょっと私には分からなかったのですが
世界観は嫌いじゃないです。
wikiにもありますが『スチームボーイ』の原点になったとか。
うーん
とても評判の悪い『スチームボーイ』
やっぱり観たほうがいいかな。


3作品を一気に見て思ったのが
短編ていいですね
ということ。
お話が短いぶん世界観を把握するのがなかなか大変だったりするのですが
それをいい意味で捉えれば説明くさくならない。
そして情報量が少ないゆえにシンプル
観ているの私たちの想像力を刺激します。
無駄な要素もなく
一番大事な部分がよく見えてくる気がします。

こういうオムニバスの劇場作品今ももっとあってもいいのになあと思いました。