2011年9月3日土曜日

ハーモニー

伊藤計劃『ハーモニー』を読みました。
彼の作品は『虐殺器官』のほうが有名かもしれませんが
私は『ハーモニー』のほうが気に入りました。

直接的には描写されていませんが
虐殺器官で描かれた世界のさらに先の世界を描いた作品です。

大災禍のあとに作られた高度な福祉厚生社会。
誰も病気で死ぬことがなくなった世界。 
そうした世界を伊藤計劃氏が亡くなる前に病床で書いていたと思うと
なんともいたたまれない気持ちになります。

とても素晴らしい作品でした。

『虐殺器官』、『ハーモニー』の二作を読んで感じたのは
面白い設定とリアリティから作られる圧倒的な世界観があれば
特別に豊かな感情描写などがなくても
作品として十分に成立するということです。
勝手に自分の想像でそのへんは補完してしまします。
むしろそれが作品をさらに面白くするような気がします。

巻末の解説にもありましたが
切実なロジックが、キャラクターを介して、切実なエモーションを産み落とす。
その通りかもしれません。


追記: 
ふと思ったのですが
SF要素のある作品を読んで共通して感じるのは
やはり人間の行き着く先は意思の消滅なのでしょうか。
そういう作品が多いうような気がします。 

精神と肉体の分離 → 精神のみによって成立(肉体の消滅)or 個の消失(精神の消滅)?

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